「32週で生まれた赤ちゃんってどんな状態なの?」、「どんな心配があるの?」,「赤ちゃんのことをもっと知りたい!」
↑こんな疑問に答えます。
私は24週から切迫早産の診断で入院→自宅安静中から41週で出産しました。
40週までは程遠い目標だったため28週、32週…と少しずつ目標を立てていました。
週数が1週間でも1日でも長ければ生まれてきた赤ちゃんの状態は成熟に近づいていますが、実際どんなことが問題となってくるのかについて説明します。
32週で生まれた赤ちゃんを簡単に表すと(完全に私の主観)
「色々な機能はだいぶ成熟してきているけど、あと一歩」
という感じです。
以前28週で赤ちゃんが生まれた場合についての特徴について書きました。
今回の記事は28週の頃と比べているところもあるのでそれも合わせて読んでみてください。
Contents
32週の早産で生まれた赤ちゃんの特徴
呼吸のお話
以前の記事でもお話ししましたが、肺サーファクタントという物質が、肺が完全につぶれてしまうのを予防してくれています。
この肺サーファクタントが十分にない状態だとRDS(呼吸窮迫症候群)という診断になります。
肺サーファクタントは32週ごろで十分量になると言われています。
そのため、個人差はありますが、32週で生まれた赤ちゃんはRDSにならないですむ子が多いです。
では何が問題となるのかというとTTN(新生児一過性多呼吸)、無呼吸発作が問題となってくることが多いです。(もちろん呼吸に何も問題なくケロッとしている子もいます)
TTN(新生児一過性多呼吸)とは
赤ちゃんは胎内では呼吸をしておらず、肺は肺水という液体で満たされています。
産道を通る時に一部の肺水が絞り出され、残った肺水も生まれてから呼吸をすることで徐々に吸収されていきます。
しかし、早産で緊急で帝王切開になった場合などは産道を通過しないため、肺水の排出が不十分となってしまいます。
また満期に近づくにつれて肺水を吸収する機能も上がりますが、早産の場合吸収に時間がかかってしまいます。
そうなると、生まれた時におぼれたような状態になってしまうことがあります。
そのため酸素がうまく取り込めず、呼吸回数を増やして苦しいのを補おうとします。
このように、肺がびしょぬれである場合にTTNと診断されます。
みられる症状としては、呼吸回数が多い、顔色が良くない、息を吸うと胸のあたりがペコペコへこむなどが見られます。
治療としては、TTNの症状の程度により、酸素の投与、鼻から圧をかけて呼吸をサポートする、口から管を挿入して人工呼吸器管理を行うなどです。
一般的には3日~5日程度で肺水が吸収されて呼吸が楽になることが多いです。
無呼吸発作とは
私たちは起きているときも、寝ているときも意識しなくても呼吸を絶えず行っています。
これは脳幹にある呼吸中枢が管理をしています。
この呼吸中枢が確立するのは34~35週頃と言われています。
そのため、32週で生まれた赤ちゃんは呼吸するのをたまに忘れてしまい、無呼吸に伴って顔色が悪くなったり、心拍数が低下することがあります。
治療としては、
- 呼吸を忘れてしまわないように呼吸を促進させるための薬の投与を行う
- 酸素の投与や鼻から圧をかけて呼吸をサポートする人工呼吸器を使用する
ことが多いです。
この無呼吸発作は寝ているときや、泣いた後・ご飯でお腹が膨れている時などエネルギーを消費して疲れてしまったときに起こりやすいです。
鼻から圧をかける呼吸器とは大人の睡眠時無呼吸症候群の治療に使用されるCPAPと同じようなものになります。
赤ちゃんの気道はとても細いです。
そのため首の向きなどですぐ苦しくなってしまうリスクがあります。
そのため常に圧をかけることで気道の通りを良くする作用があります。
また風船を膨らます時を想像してみてください。完全につぶれた風船を膨らますのと、少し膨らんでいる風船とどちらが膨らましやすいでしょうか??
もちろん少し膨らんでいる風船の方が少ない力で膨らますことができると思います。
そのため鼻から圧をかけて肺を少し膨らんだ状態にしてあげることで、赤ちゃんは少ない力で呼吸をすることができるようになります。
赤ちゃんは呼吸をするのもとてもエネルギーを使って一生懸命呼吸をしています。
1呼吸1呼吸に使うエネルギーを少なくしてあげることでエネルギー消費を抑えて無呼吸発作が起こるリスクを最小限にしています。
目の前で呼吸が止まってしまったら
無呼吸発作がおこると体内の酸素が少なくなるためSpO2(血中の酸素飽和度)の値が低くなったり、心拍数が低下します。
ほとんどは呼吸が再開すれば回復することができます。
そのため優しく声をかけてあげたり、足をツンツン刺激して呼吸を忘れていることを教えてあげてください。
この時注意することは、急に大きな声で話しかけたり、頭に近いところを刺激しないことです。
32週の赤ちゃんはまだ脳の血管も未熟なため脳出血を起こしてしまったり、刺激に弱いためストレスを感じてしまう恐れがあるからです。
循環(血液)のおはなし
32週の赤ちゃんは28週の頃に比べてだいぶ自分で血圧を維持したりできるようになってきます。
しかし心臓の機能はまだまだ未熟なため、血圧をあげるお薬が必要な子もいます。
そして以前の記事でも書いた、動脈管開存と脳出血についてです。
詳しくは、⇒ 妊娠28週で赤ちゃんが生まれた場合【NICU看護師が解説】
本来、動脈管は生まれた後は使用しない血管なため24時間以内に閉鎖します。
動脈管は酸素に反応して閉じるため出生後呼吸状態が安定している必要があります。
しかし、「呼吸のお話」に書いたように、32週で生まれた赤ちゃんは呼吸状態が安定するのに時間を要することがあます。
それに伴って動脈管が閉じるのも遅れる可能性があります。
脳出血についても32週未満で生まれた赤ちゃんが特にリスクが高いと言われているため、リスクとしてはだいぶ低くなってきていますが、動脈管が閉じないことにより血圧の変動が起こり脳出血を起こしてしまう可能性もあります。
一般的に脳出血が起こりやすいのは呼吸や循環の状態が安定するまでの生後72時間と言われているため、最初の3日間は赤ちゃんが胎外生活に適応できるように応援してあげてください。
栄養のお話
ご飯をお口から飲むためにはまず、
- 「チュッチュッ」と吸う(吸啜(きゅうてつ)と言います)
- お口のミルクを「ゴックン」と飲み込む(嚥下(えんげ)と言います)
必要があります。
赤ちゃんはお腹の中でも羊水を飲んで哺乳の練習をしており、32週の時点では吸啜、嚥下を単独に行うことはできます。
しかし、一連の流れとして吸啜→嚥下を行えるようになるのは34週頃と言われています。
なので、32週の赤ちゃんに口からご飯をあげると、むせたり、ごえんしたりしてしまいます。
病院によってお口で飲む基準は違うと思いますが、おおよそ34週頃になるまではお口から胃まで管を入れて管から母乳やミルクを注入することになります。
また、吸啜・嚥下の合間に呼吸もしなければいけないので、呼吸状態が安定しているかどうかもお口で飲めるかどうかの判断材料になります。
また、体の中で血液や酸素が一番必要な臓器は脳です。
そのため呼吸や循環の状態が安定していないと体が胃や腸への血流を減らして、その分を脳に持っていってしまいます。(生まれたばかりなのにすごいですよね)
その結果、胃や腸の血流が減り、うまく消化・吸収ができなくなってしまうことがあります。
そのため最初は少ない量から注入を開始して、消化・吸収ができているか見ながら徐々に増やしていきます。
また、うつ伏せに寝かせると消化を促しやすくなるため、なかなか消化が進まない時にはうつ伏せに寝かせて消化・吸収を助けています。
成長・発達について
早産で生まれた赤ちゃんは、外からの刺激に対してとても敏感でストレスを受けやすい状態です。
そのためNICUはお腹の中の環境に近づけるため薄暗く、静かな環境になっています。
正期産の赤ちゃんが泣いていたとして、その子をあやそうとするときに抱っこしてトントンしたり、ユラユラしたりするのを想像すると思います。
が、このトントンやユラユラを心地良いと感じられるようになってくるのは36週くらいからです。
32週の赤ちゃんにとっては刺激が強すぎるためストレスとなってしまいます。
また正期産で生まれた赤ちゃんの姿勢は筋緊張によって手がWの形、足がMの形となっています。
↓こんな感じの手足↓
しかし早産の赤ちゃんは筋緊張が弱く、自分でWMの姿勢をとることができません。
WMの姿勢をとることは、お腹の中にいた時の姿勢に近く、赤ちゃんが落ち着くことができます。
面会の時に
NICUに入院中の赤ちゃんは、おそらく姿勢を保てるようにタオルや、ポジショニングマットと言われるマットに囲まれていると思います。
↓こんな感じ↓
出典:https://www.kango-roo.com/kq/archive/620
面会時には優しく声をかけながら手と足をWMの姿勢にしてあげて両手でそっと包み込んであげてください。(ホールディングと言います)
泣いている赤ちゃんもホールディングをしてあげることで落ち着き泣き止むことも多いです。
まとめ
まず、最初の72時間は赤ちゃんが胎外の生活に適応できるように呼吸・循環状態を安定させることが最優先です。
人工呼吸器を使って呼吸の補助をしたり、点滴を入れて呼吸や血圧を保つようなお薬をいくこともあります。
栄養は口から飲めるようになる(おおよそ34週くらい)までは口から胃まで管をいれて栄養を補います。
ただし、呼吸や循環状態が安定していないとうまくご飯を消化・吸収できないため様子を見ながらご飯の量を増やしていきます。
しっかり栄養をとれるまでは点滴から糖分や必要な栄養素を補います。
成長・発達については32週の赤ちゃんはまだ音・光・触られることなどの刺激に対して敏感な時期であり、自分で落ち着くWMの姿勢もうまく取れません。
そのためタオルやマットの使用、またはママやパパの手でWMの姿勢を作ってあげて、両手でしっかり包み込んであげることが大切です。
「成長発達」についてはまた今度詳しく書いていこうと思います。
みなさんのお役に立てれば幸いです。
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